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経済学公理に基づく客業生産論

アダム・スミス経済原論の公理が示す客業生産(Ordustrial Orduction *1)
                                          
アダム・スミスの経済原論「国富論」(1776年刊)の第一編に、生産の能率向上には何より分業を行うことだと説き、生産に必要な労働をいくつかの単純な作業に分割して、それぞれの労働者がその単純な作業を分担し、いつも同じ作業をすることになれば、第一に労働の熟練の増大により、第二にひとつの作業から別の作業に移るときの時間の浪費がなくなることにより、第三に作業が専門化して道具や機械の改良が容易になることで、生産力は上昇すると説明した。この分業を流れ作業にして生産ラインを作り上げたのは自動車生産のヘンリー・フォードであった。工業生産の流れ作業方式は20世紀の生産モデルとなり、大量生産、大量販売、大量消費、大量廃棄の工業社会を現出した。しかし、スミスは国富論の第五編で分業のデメリットを指摘しており、分業が人間に有害な影響を与えるとし、分業は労働者をおろかにすることに気がつき、教育によってこの弊害を除去できると考えた。しかし、その後、分業は近代社会の根本的病弊のひとつに数え上げられるにいたるのである。それをマイケル・ハマーはその著「リエンジニアリング革命」(1993年刊)において、次のように述べた。アダムスミスが最初に指摘してきてからずっと、企業組織の軸になってきた分業はもはや機能しないのだという現実を企業は直視しなければならない。これまで、大量生産、安定、そして成長を目標としてきた企業は、顧客、競争、変化によってクィック・レスポンス(機敏性と迅速化)とマルチ・レスポンス(柔軟性)とを求められる世界では成功できないのである。リエンジニアリング後のビジネス・プロセスに見られるもっとも基本的な共通の特徴は、組み立てラインがなくなり、以前にはそれぞれ別々に分かれていた仕事や業務が統合され、ひとつにまとめられるということで、セクショナリズムを伴わない。これを統業という。専門教育も統業的観点を欠く。そしてわが国のパソコンなどの工場では、いま多くが「セル生産方式」と呼ばれる方法で生産されている。ベルトコンベアーを使った数十人規模の生産ライン体制ではなく、少人数で完成させるやり方であり、その方法を生産のムダ取りの中で山田日登志が編み出したと、NHK総合テレビは放送した。生産が顧客に対してクィックとマルチのレスポンスを高めるには、分業は否定される。スミスは、「国富論」第4編において次のように述べている。「…全ての生産の唯一の目的であり目標は、消費である。生産者の利益は、消費者の利益を促進するのに必要なかぎりでのみ、配慮さるべきである。この公理は完全に自明であって、これを証明しようとするのがばかげているほどである。しかし、重商主義においては、消費者の利益は殆ど生産者の利益の犠牲とされており、消費ではなく生産こそが、あらゆる産業と商業の究極の目標であり、目的であると間違って考えられているようにおもわれる。…」
ここで行政が生産者サイドで多くの破滅的失敗を犯してきているという現実があり、福田内閣の消費者庁創設につながっている。また生産者が消費者と遊離し、顧客のことが分からなくなって、生産して思うように売れないと悩んでいる。水田洋・名大名誉教授著「アダム・スミス」(講談社学術文庫)には、生産が消費者を目的とするというのは、国民生活の豊かさが、国民の富なのだという、スミスの基本的立場の表明である、と解説している。さて、筆者の提唱する客業(Ordustry *1)生産(Orduction *1)の思考は、アダム・スミスの経済原論の公理に基づくものであると確信できる。当時の重商主義と同様の誤りを工業生産思考(大量生産病)の生産重視論が犯しており、それがなお「プロダクトアウト」として廃れていない現状だと言えるだろう。
注 *1)いずれも筆者の造語であり、辞書にはありません。

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